春とおっぱい/田代深子
 

鳥のため
おおきなおっぱいが
ほしいとおもう
春さかり
右のほうが
小さいと気づいてから

左おっぱいの下に
空袋があって
そこに鳥が棲む
とっととっとなくつがい
一羽とびたちもどっては
一羽でかけてまたもどる

左おっぱいの春は
いそがしい
雛が飛び立つまで
とっととっとさかんに
話しているのらしい

とっととっとの
左おっぱいを
右掌で包み少し小さい
右おっぱいも左掌で包む
もう少しおおきければ
右おっぱいの下にも
空袋があったら

春は静かだろうか



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