腹上死/おるふぇ
 
存在しないかのように
立ち居振る舞うだろう
そして、
どこにでもいる恋人同士と同じように
最初から決まっていたかのように
ラブホテルのドアをくぐる

シャワーを浴びた後
タオルで包んであげて
そのままベッドへと
なだれ込む




いつもより優しい言葉
いつもより巧みなキス
いつもより長い愛撫
何かを打ち消すかのようなその行為
本当の至福は
俺と君との間にだけ
生まれる

どこか偽物臭い照明も
安っぽい壁の柄も
染みのある床も
ねえ、
あの夜よりかは
ましに見えるだろう

君の乳首は左側の方が大きくて
君の喘ぎ声は訛りが入っていて
君の愛液は粘度が強かった
顔や名前は勿論
性感帯すら俺は知っている




行為をしたまま
絶頂を味わいながら
君の腹の上で死ねたら
恍惚の表情で
昇華できるだろうか
強く強く
これが愛だ、と
四肢を震わせて
理性を捨て
本能を超え
二人は天国へと
逝ける、刹那
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