エンドルフィン・ハイスコア/えぬ
雲がひとつもなくて
それほど冴えた青い空でもなくて
見た目に限れば陽差しは豊かで暖かげで
旅客機が白く高く遠く横切って
潤いと熱を瞬時に外気に奪われて
瞬きで新しく熱い涙を滲ませ
覗きにきたポストは空だったのに
不実な便りの幻影の繰り返しに
またもや捕まってしまい
しばらくは動けなくなる覚悟をする
ところが さっきまで高いところにだけ吹いていた今日の風が
きまぐれに足元に駆け下りてきて
頬と耳たぶを引き裂く感覚とともに吹き上がり
噴出した血しぶきを従えながら くるみの幹を駆け上り
そのまま飛行機雲を追う
その一瞬の間(ま)に与えられた皮膚感覚と
みるみる遠のいていく切り裂く風の痕跡が
神秘の脳内物質値を急上昇させ
破られることの無いように思われた
あなたの出したハイスコアを
あっさり凌駕し名前を消し去る
戻る 編 削 Point(1)