別れの言葉/夢幻
君は理解していない。
人と別れるということを。
私と別れるということを。
そうやって無邪気に笑って、手を振って。
さよならを言うだけで良いと思っている。
やがて沈みゆくあの太陽と同じように
明日も再び会えると確信してしまっている。
現在(いま)にも音をたてて崩れてしまいそうな平和に
満足し、安心して、溺れきってしまっている。
君を見送る私の心は
こんなにも不安で愛(お)しくて堪らないのに。
君の無知な心は残酷。
君の疑心無き心は残酷。
どうか、どうか。
今日は背中合わせになる前に
二人を約束で繋いでおこう。
いつかまた会いましょう、と。
私はあなたを忘れません、と。
再会するまで忘れません、と。
言葉を紡いで確かなものにして。
私が明日も生きてゆけるように。
君の心が遠く離れてしまわないように。
やがて沈みゆく太陽と同じように
この別れが永遠でないことを祈って。
約束しよう。
それはとても儚いものかもしれないけれど。
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