暗闇の中から、また叫ぶ/麻生ゆり
その日はとてもいいお天気で
猫ですらも暑そうだった
私はベッドにうつぶせになって
布団に体を沈みこませていた
そのうちに
耳に聞き慣れた音が忍びより
私を、不安に陥れる
また、やってきたのだ
鼓動と呼吸が速くなる
見えない手が、心臓を握っているかのように
べったりと、しめあげる
徐々に、心が侵食されていく
あの、闇夜よりはるかに暗いものに
腕にナイフで筋をつけても
かまわず入りこみ、囁くのだ
おまえは無力だ、と
血や死の雰囲気が、どこからか香ってきて
泣きじゃくり、自分自身の叫びで我にかえる
己を律することのできない恐怖にまみれ
頭痛の中、無理矢理眠りにつく
目が覚めると、
井戸のようなところに落ちていることに気づく
それは夢でも現実でもなく
単なるイメージにすぎないのだけれど
世界は
私が思うほど私を必要としていなく
私が思うほど私を不要としていなく
結局
どちらでもいいのだ
誰かから必要とされる自分になりたい
そう願っていた日は遠く
もはや
逃げられない
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