声に/なかがわひろか
 
何年ぶりかのあなたの電話から
あなたの声が少し枯れているのを聞いて
風邪などひいていなければいいのにと思います

時折繰り返される思い出話に
あなたの笑う声を聞いて
なぜか少し安心しました

なかなか勘を取り戻せずに
沈黙が時折私たちの声を吸い込んでしまいますが
私は途切れないように一生懸命話をするのです

あなたが少し眠そうな声を出したので
私は話を終わりへと向かわせて
会話の延長のように電話を切ります

あなたとの話の内容は
ほとんど覚えていませんが
私はあなたがゆっくりと眠れるようにと

祈っているのです

(「声に」)

戻る   Point(2)