声に/なかがわひろか
何年ぶりかのあなたの電話から
あなたの声が少し枯れているのを聞いて
風邪などひいていなければいいのにと思います
時折繰り返される思い出話に
あなたの笑う声を聞いて
なぜか少し安心しました
なかなか勘を取り戻せずに
沈黙が時折私たちの声を吸い込んでしまいますが
私は途切れないように一生懸命話をするのです
あなたが少し眠そうな声を出したので
私は話を終わりへと向かわせて
会話の延長のように電話を切ります
あなたとの話の内容は
ほとんど覚えていませんが
私はあなたがゆっくりと眠れるようにと
祈っているのです
(「声に」)
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