水流の果て/古河 セリ
「水流の果て」
円
鼓膜をふるわす深緑の葉音
幸せな季節のうららかな羽音
流れる
幾何学をまとった馬車の轍の下で
土の動物の思惟と哲学は時に溶けゆく
地球の宴には
あらゆる海の人が月を崇め
涯際にて真珠のようだと己の肉体を折り畳む
海
思想は広大であり人間の無限の海底に溜まるが
沈殿した海底は人生に洗われ砂の無に還る
水平線
空や大気を呑む人間は水平線であり
臓腑に海を抱え 地を抱える
水流の果てでは
全てが流れて
全てが死にゆき
全てが生まれゆく
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