水流の果て/古河 セリ
 
「水流の果て」



鼓膜をふるわす深緑の葉音
幸せな季節のうららかな羽音

流れる

幾何学をまとった馬車の轍の下で
土の動物の思惟と哲学は時に溶けゆく

地球の宴には

あらゆる海の人が月を崇め
涯際にて真珠のようだと己の肉体を折り畳む



思想は広大であり人間の無限の海底に溜まるが
沈殿した海底は人生に洗われ砂の無に還る

水平線

空や大気を呑む人間は水平線であり
臓腑に海を抱え 地を抱える

水流の果てでは

全てが流れて

全てが死にゆき

全てが生まれゆく

戻る   Point(3)