奇跡について/佐々宝砂
 
さよならを言ういとまを
あなたはくれないだろう
私の知らないうちに
あなたはどこかに消えるだろう
夜空の星はいつまでもそこにあるわけではない
青空の太陽はいつまでも輝くわけではない
念のため言っておくが
雨が降るの雲が晴れるのという
大気圏内の話はしていない
夜が来るの朝が来るのという
地球規模の話もしていない
この宇宙は常に夜であって
ささやかな光が
ところどころに細々とひかるだけなのだよ
そんな場所で
私とあなたが出会ったのはおそらく奇跡だが
奇跡というものは
我々が考えるよりたやすく起きるものであって
しかし奇跡はやはり
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