猫茶碗/
 
古着屋、ゲーセン、タコ焼き屋、本屋
などが軒を連ねて立ち並ぶ
閑散としたシャッター通りにあって
その饂飩屋は繁盛した
昼時ともなると、どこからともなく現れた
学生、サラリーマン、土木作業員、借金取たちで
わずか十席ばかりしかないカウンターは
びしりと埋めつくされた

饂飩屋の店主は気立てのいい真面目な男で
性格に因んで店の屋号も「真面目屋」
にするほどの堅物だったが
家庭を顧みないその真面目さが却ってあだとなり
終いには女房、娘たちにも愛想をつかされ
別離で暮らす妻子たちに細々と
養育費などを送金し続けながらも独り
来る日も来る日も、饂飩をついては商った

昼の
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