記憶のかけら/あずみの
あなたが好きだったアーティスト
なんだか鼻について嫌いだったわ
あなたが好きだった作家
なんだか生き様が嫌で好きになれなかったわ
あなたが好きだった食べ物
なんだか食感が妙でおいしくなかったわ
天邪鬼なわたしはそうやって
あなたと違うことを強調することで
ひとりの人間として見てもらおうと
きっと必死にもがいていたの
そんなわたしをあなたは
何も言わずにただ
優しい目で見守ってくれていたわ
幼いわたしにはそれさえも苛立ちだったけれど
でも不思議ね
嫌いだったアーティストも作家も食べ物も
自分が好きなものよりずっとずっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)