繋がっていくもの/はじめ
 
定年後から本格的に詩を書き始めたという 彼の詩は素朴なものが多く ありふれた日常から少しはみ出しているものを少しずつ書き留めていくというスタンスだった だが彼のそんな田舎臭い詩は時代とマッチするはずがなく 自分が癌で余命が宣告されて自費出版で出す為に出版社の編集者に見せるまで一度も誰も彼の詩を読んだことは無かったという 賞やコンテストの存在すら知らず 今まで井の中の蛙状態で詩を書いていたのだ けれども今までこつこつと年金の残りを溜めて揃えたお金を払って自費出版することを決めると 彼の入院先に彼担当の編集者がやって来て優しく本作りを手伝ってくれた 本にする詩を選んだり 大量の誤字・脱字を直したりなど
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