空白的な午後/
塔野夏子
その午後に
虹色の球体と
銀で縁取られた黒の正三角形と
無色透明の六角錐とが
話していたことは
宙吊りになった中庭に
置く角度を間違えられたまま
置かれている白い日時計のことであった
「そもそもあれは誰かが
自分の墓標がわりにして欲しいと
造らせたものではなかったか」
「誰かというのは誰のことなのかい」
「それをもう誰も思いだせないのさ」
日時計のまわりの灰色の敷石には
緑の樹々の影が揺れており
その影の色もまた緑であった
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