玉ねぎ一つ/池中茉莉花
北の北の大みそか
美香子はおこたでうす茶色の玉ねぎ一つ見つめてた
小さなめんこい玉ねぎを
電気きれた ガスもとまった お水もとまった
おさいふには一円玉が2つだけ 石油を買いにいけないの
おこたの中も氷だし かけるものもおふとん一枚
セーターなんてないしねぇ
でもぜいたく言っちゃ いけないわ
かあさん遺したエプロンが2つもあるから両方着るの
これね、かあさんに買ってあげたの かわいいでしょう
とうさんの服はないけれど ぱんぱんって おっきく手のひらあわせれば
ほら かみさまがみえる
とうさん教えてくれました
何も食べずに玉ねぎさん ふとっちょでいいわねえ
おまけに日に焼けていて
おなかはね すいたと思えばすくからねぇ
玉ねぎさんとおんなじに たべなくたって ふとっちょよ
ねむいわねぇ ねむいねむい いっしょにねましょ もう夜だから おやすみね 玉ねぎさん
ぴーぽーぴーぽー
救急車が呼んでないのに来たのです
だから、みか、ここにいられる
ありがたいことね
ね、茉莉花
戻る 編 削 Point(7)