東京パック/たもつ
肩が外れた
外れた肩を持って闇市に行った
拾ってきた新聞紙を広げ
粗末な店を開き肩を置いた
たくさんの人が前を通り過ぎた
みな急ぎ足だった
しばらくして
職業軍人らしき人が買っていった
最後までうつむき
目を合わせることはなかった
そのお金で二等車の切符を手に入れて
遊園地に向かった
車内でサンドウィッチを頬張った
ソースの味ばかりがした
遊園地には着いたけれど
帰りの運賃を差し引くと
入場するにはお金が足りなかった
大きな観覧車が場外からでも見えた
街に戻り
残ったお金で初めて女を買った
自分より少し若い感じの女には
同じように肩が無かった
お互いそのことには触れなかった
あの天井のように
遠くに行きたかっただけかもしれない
女の体臭なのか
街の臭いなのか
区別もつかなかった
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