悔悟/clef
 
このまま眠ったら気持ちがいいだろうなという気持ちのままで眠ってしまったらしい。
気持ちがいいだろうなという気持ちのまま、は一字一句紛うことなくその通りで、
文字の羅列は保存されずに まま のところで、いなくなってしまった。
もう戻っては来ないのだろうか。
何とかして呼び戻す方法があったら恐らく、福音。

いなくなると思わなかったものがもはやいないのだ、と知る痛さは
体温を奪う。
すぅっと寒くなる。いや、文字の羅列のことではなく。

心とは裏腹に、目蓋が重かったり空腹を感じたりすると、自分は生き物だったのだ
と安心する。
一日以上睡眠や食事を摂らなくても眠くもなく空腹も覚えない、などというとき何を思い出すかといえば、
山姥。
妄執に取り憑かれ怨念のみに生きる。篁物語もそれだ。

この時間の夜には、隙間がない。暗闇の密度が濃い。

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