迷ひ路/朽木 裕
滅びの唄をジュラルミン・ケースに詰めて歩く。
血がさんざめいて、夜。
吊るされた男と目が合って、
その目の中に死神を見た。
「貴方ノ狂気が見タイノデ、
夜に閉ジ込メテモ宜シイデスカ?」
喉から洩れ出る空気にのせた声は響いて 雨。
「君の愛で汚してくれるなら構わないよ」
(出来っこない。君には出来っこないよ。)
ひそやかな呼気を塞ぐ血の臭気に
鼓動が跳ねる。
時の急降下。
薔薇の散る閉鎖空間で
口唇にこびりついたのは
此の世で一番、綺麗な君の 赤。
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