誰彼/し ん
 
揺らんでいる暮れが
恋人の宵に口づけを落とし
昼間に日干しした布団へ
滑らかに泳ぐよう沈んだ

暮れが眠りについた頃
隣人の顔が宵色に照らされ
誰?と問えば
無言で言葉が返る

青白さが指に絡まれば
吸い込まれるように
つま先で水面の音階をなぞり
そのまま水中へ上がってゆく

魚が啼きながら宵を飛び
煌々ときらめく銀水晶
垂れ落ちる雫は
笑い喘ぐ月が舐めとる

いつの間にか青白さが
僕と僕に重なりあい
そのまま宵の空に
溶け込んで、溶け込んで、溶け込んで、、

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