不思議な交際 /服部 剛
君には彼氏がいるというのに
「 あなたの声を思い出してた 」
猫なで声でぼくに言う
その夜ぼくらは夢を見た
誰もいないましろい世界で
向き合う君が
かくん と膝を落として
ぼくの足元でおいおい泣いた
翌日の正午
ぼくらは改札で待ち合わせ
寺の竹薮にある茶屋で
腰を下ろして肩を並べた
一輪の花が描かれた茶碗を手に
戸惑いを秘めた君の横顔
彼の顔が浮かぶ風船の糸を
片手の指でつまんで持っていた
隣のぼくはハサミを出して
ゆれてる糸を、ぷつりと切った。
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