必衰/岡部淳太郎
ながら深くなっていく
生は大体において過剰を好む
生めよ増やせよと
過剰を推奨する
だから信用ならない
しかし 息を途切らせながら
丘を上る私の この生に
どんな過剰が栄えたためしもないのだが
いずれにしても
私はただのいちども
盛者であったことはなかったはずだ
むしろ盛んなる者であることを
自らに禁じてきたような気がする
それにしても丘はまだ
その全容を見せない
驕れる者 久しからず
私の正しさも
私の疚しさも
また同じ
またしてもひとり
つぶやきながらなおも
意味のない丘を上る
私はただ衰えるためだけに
数十年の生を費やしてきたように思える
[次のページ]
戻る 編 削 Point(17)