一輪の華/
夢幻
道端の、視界のほんの隅に咲く
名も知らぬ一輪の花を見て
嗚呼、こんな風に強くなれたらと
密かに望む自分がいた。
どうしても強さの証明が欲しくて
その薄紫(あさむらさき)の小さな花弁を
嫉妬と快感の混じる靴底で、踏み躙(にじ)る。
砂利に色素を滲ませながら
あっけなく散る花の最期を眺め
優越を感じ、口の端を持ち上げる自分は
世界で一番弱く、醜く、
哀しい人間、なのだろうか。
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