隙日/ヨルノテガム
 

人っ子一人、チラッとも現れなかった
路地というと路地からひと気は全く無く
ビル建物の頑丈な影がノリのように地べたに貼りついていた
駅のホームを端まで歩いたところで、丁度電車が入って来ていた
回送表示ではない定刻通りの無人の空箱が連なって
わたしひとりを乗せる 何処かへ降りる当てなく
窓にもたれて移動を眺めた

四、
音もなく景色は流れて、
珍しく今日は家から駅まで
道ばかりに過ぎた
それは改札口に着いても
階段を登っても
プラットホームに上がっても
周りの街々へ首をかしげても
電車が到着しても、
わたしはわたししか見つめていなかった
車内にポツリと座り、昼の影と落光の入れ替えを
淡々と身体に浴びて
見つめる目を閉じて、閉じた








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