沼の底/ユキムラ
 
いつも見ていた。僕を知らない、君の後ろ姿。

ずっと前から知っている様な気がするのに、今の僕は君の事を何も知らない。

いっそ、話しかけてみようか。





だめだめ  むりだよ  そんなこと できやしない

だって じぶんを よく みてみなよ

おまえは そこから うごけない

ぬけだせない

でられたとき  あのひとは もう いない





赤い沼の底から、幾重にも重なる声が響いて、痛い程に僕を絞め付ける。

何かが僕に絡み付き、ゆっくりと首を絞め上げてゆく。




この儘、沈んでしまおうか。そうしたらもう、苦しまなくても済む。







・・・・・・ふと、誰かの声が聞こえた気がした。



けれど僕にはもう、息が出来ない・・・・・・
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