箱の隅の断想/をゝさわ英幸
海のない海辺。
砂から突き出た、跳箱のような駱駝の死骸の瘤。
得体の知れぬ不可視光線によって蝕まれる膚。
虚空に漂い、あらゆる輪郭を溶かしだす陽炎。
方角のない土地。
風に舐められた砂が舞い、目鼻や口に入り込もうとも、彼はひたすら歩き続ける。
だが、目的は、出口はあるのか。
無いかも知れぬ。
それでもやはり歩き続ける。
上を見れば暑さの源。
だが、太陽を憎む道理は無い。
下を見ればあるのは砂だけだった。
目的への道は無い。
彼は立止まり考えた。
「だが、目的はある筈だ」
前には果ての無い砂原。
砂に埋もれる足から戸惑いが湧き上がる。
「オアシスは本当にあるのか?
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