キルティング担当大臣/カンチェルスキス
 
掌はこう答える。
「わたしはドーナッツは苦手でしてね、見るのは好きですよ、あからさまに向こうが見える食べ物ってちょっとないですからね。イカリングとかパインの輪切りとかそういうのしかわたしは思い出せないぐらいで。ありのままの姿で向こうが見える食べ物ってドーナッツぐらいじゃございません?イカリングやパインの輪切りはもともと輪になんかなってないですからね。わたしはただこうしてみなさんが楽しんで頂ければ満足ですから」
「いい人だなあ、車掌さんは。みんなで車掌さんを労う飲み会でも開こうぜ!」
 出欠を取る者まで出てくる。オーっという声が車内に鳴り響くが、まるで白木屋とかの体育大学生の宴会みたいだ。

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