文 字/をゝさわ英幸
 
真っ新な紙に文字が沁みる
字面になり損ね、はじけたもの
とばしった点と点
不必要に思われたものが
繊維を沈み込んで行く過程で
必要なものゝ如く
一本一本に記憶を残して行く

まだ紙の発明のならざる頃
鬱屈とした感情を抑え切れず
土に線を引き、岩に溝を刻み
遊んだ。……祭祀が邪気を払う為に不可欠の行いだったのかも知れぬ

甲骨の文字には
伝説的な古えのものがひそんでいる
それは時に音を発し、また黙る
墨が生れた刹那より
解放された文字の、かすれや沁みは
それらの音の名残かもしれぬ

文字を見つけた時
無意識の感覚が、意識の
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