マンゴウ/まほし
 
スーパーマーケットの入口で
マンゴウを手にした瞬間、
子宮が微かに痙攣したのを
見逃すことができなかった
雨の、せいかもしれない
外からは背すじを正すような
水しぶきが響いている


とおい五月に
こんな風に滝に打たれるように
マンゴウの日本画を観た
「百一才」
と、右下に記された絵は
女流画家の小倉遊亀さんが
その年でほんとうに描いたものだ


黒塗りのお盆に
赤や橙や萌黄色の
まあるいマンゴウが
七つほど重々しく転がっている
その姿は
どこかあっけらかんとしていて
それでいて生命力にみなぎっていて
百一才という年輪の上に
実らせた魂、
まっ
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