オオカミの女の子/リヅ
ていた
あたしは結局その男と別れて
今はもう男が教えてくれたタバコの吸い方と銘柄以外
全部忘れてしまった
タバコ七本分の時間を使ってあの娘に届く言葉を探してみたけれどうまくいかなくて
だいたいあの娘は最初から何も持ってなかったことに気付く
あたしも同じだ
あの娘とあたしの違うところは
男を知ってるか知らないか
お酒を飲むか飲まないか
タバコを吸うか吸わないか
そのくらいで
そんなのなんでもないことで
なんにもならないことで
あたしはあの娘を起こせない
右手指先から青白くて半透明のリボン
西日に照らされて
ゆらゆらと
ひらひらと
光る
夢の中の蝶が瞼の後ろでゆらめいている
緑の木々 花畑 冷たいシーツ 甘い言葉
おいでよ
あたしが、夢の中で夢見たものは
おいでよ
あの娘が顔あげた
ゆっくりとためらいがちにあたしのタバコを奪って
案の定むせて
眉ひそめたまま
うまい、と言った
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