sauce/水町綜助
 
バルサミコソースが複雑に酸っぱくて
関係ないのにあの汗の味に似ていたからって
ああもうぜんぶだめなんだとフォークを置いた
まったく大げさな話だ
こうやって一日中町をふらついたあと
溶けた飴で出来たバーの中
きいきい鳴く一席に浅く坐って
焦げ付いたポスターが風にたわむ音を聞きながら
町の上に昇り続けている太陽に店ごと透過されつづけている

黄金いろだ
夜の間中

置かれた銀色のフォークがゆれてる
その光だけがぶれて

 
 +四杯目から+
  
  夜に思うこと
  
  暗闇のこと
  
  手探りであること
  
  背中の不可視性
  
 
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