裸のディナー/村木正成
君が運んできた卵料理を食べながら
僕のそばに腰かけた君の瞳に見入る
夜の闇に車の音が消えてゆくなかで
なぜだか君の表情が変わっていくのがわかった
僕が卵料理をナイフで切り開いてゆくように
君の瞳も切り開かれていった
月が明るく庭を照らすのに比例して
僕たちの影は濃さを増していった
月光のもとなら僕は上手に踊れるだろう
僕はしばし君のもとから離れて
はるかなる地に意識だけ向かう
目の前にいるのはパーティードレスを着た
狐の顔をした女だ
その女が運んできたのは卵料理だった
それでその女が君であるのが分かった
磨き抜かれた皿に見とれていてはいけない
ナルシスのように花に姿を変えるだろう
花だって?
花の花粉を蝶が巻き取ると
オルゴールが鳴りだす
狐の顔した女が
一つの鍵を差し出す
みんな持ち場に戻るんだ
僕たちは自由に姿を変えることができる
僕は白身で
君は黄身だったんだ
黄身が運んできた卵料理を食べながら
白身のそばに腰かけた黄身の瞳を見入る
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