羽化/有邑空玖
何処まで行っても交わらない二人の放物線
雲はただ憂鬱に流れゆき
君の声が聞こえない
季節は留まることなく繰り返す その呼吸を
それでも介意(かま)わない
空は嵐の日も青く在るから
強く交わした指切りを憶えている?
笑って背を向けた君の肩胛骨の翅
記憶を喪くしてもちゃんと翔べますように
硝子窓は未だ海の底の蒼
生まれる前の世界を憶えている?
永遠は何処にもないよ
願いはいつも叶えられない
期待は裏切られ続けて
胸には小さな絶望を抱えて生きていく
時折空を仰いで それが幸せ
翅はないけれどいつか翔べますように
そして今日も朽ちた百葉箱の中で眠ろう
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