目を瞑る/オオカミ
柔らかなシーツのうえで目が覚めて
ああなんて暴力的なまいにちなんだろう
とおもった
日記を書く習慣はあっというまにモノクロになって
美しい夢物語ばかりが微笑んでいた
彼は
嘘をつくときねむそうな顔になる
ほんとうに仕様のない人だ
もう老いていくだけの体でも
歪んでいくだけの歯列でも
忘れてゆくだけの言葉でさえも
あんまりにも愛しい
その痛み
噛み合わないシーツの隙間で
ゆるゆると流れていく呼吸は
うまれてくることの出来なかった
涙に似ていた
わたしがだれだかわかる?
あの日駅前の本屋の前に佇んでいた少女だよ
使われることのないシ
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