ヨルムンガンド(無限との対話)/下門鮎子
 
と相撃ちして再び眠り
焼け残った世界樹のもとで
おまえが生まれて
わたしに向かって歩き始めた
おまえとわたしとは
世界の両の目なのに
おまえはわたしを恐れたり
間違った仕方でわたしになったりする」

夢を見ていたのだろうか、
気がつくと辺りは真っ暗。
北欧神話のページに栞が独り
明りを漏らして挟まっている。
夜は味方。

仕事を終えて帰ってきた夫に
おかえりなさい、と言い
栞に触れると それは傷のように
熱をもってふるえている。
悲しい仕方で ヨルムンガンドになってしまった子どもたちが話しかけてくる――

「モットニンゲンデイタカッタ」
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