ヨルムンガンド(無限との対話)/下門鮎子
「カイテイデミズカラノオヲカンデネムル
あなたは北で生まれたのね、
わたしは南。
北の子、
海の底で眠るあなた、
雷神が来る、もうすぐ
あなたを倒しに――
雷神がわたしを倒しに来る?
あの雷神はわたしに向かって
おまえ、とたしかに呼びかけた
雷神とは誰だ、
わたしではないのか、
わたしたちは相撃ちする
死に瀕した南の言葉が
大蛇となって陸を囲むのを見た、
まるであなただった。
言葉の蛇はいつまでも島を囲んで眠る
自らの尾を噛んで、
吐気がする
世界があなたのようになればいいのにと
思った時期もあった わたしは子どもだったから あなたじゃな
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