五月考/嘉野千尋
 


  両手に抱えられるだけ
  かなしみを抱えて
  捨てに行く
  穴を掘って
  花壇の真ん中辺りに
  ここなら寂しくないでしょうと
  ささやきかけて
  そうしたら
  捨てられるかなしみが
  もういいよ、と
  答えたので
  ごめんね、と返して
  土をかけた

  
  次の日にはもう
  綿毛になっていたかなしみが
  風に吹かれて飛んで行った
  飛んで行くかなしみが、
  ごめんね、
  と言うので
  わたしも、
  もういいの、とだけ
  答えた


  蒲公英の花が一輪だけ、
  日向で風に揺れていた


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