幻視顕微鏡/嘉野千尋
 

  夕暮れ色の飛行船、
  たくさん空に浮かんでいたけれど
  空と一緒の色だったので
  誰にも気付かれないままでした。

  *

  毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
  今朝は両手に掬った水道水が
  ライト・グリーンの南の海になっていて
  綺麗な魚が泳いでいたので
  顔が洗えませんでした。

  *

  流星群の来た夜に、
  天文部の仲間たちが網を持って
  学校の屋上で振り回していました。
  次の日、Sさんから
  金平糖のお裾分けがありました。

  *

  使い終わった香水の壜を、
  机の上に飾ったままにしていたら
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