雨が上るが/ねなぎ
 
特に日報に書く事も無く
一日
喫茶店の椅子に座って
空を眺めていただけなので
空の事を書こうと
思っても
書けないでいる
雨の夕暮れ

スーツの裾の泥はねを
気にしながら雨の中を
待っていた

帰りたいのは
家にでは無く
抽象的な過去でも無く
どこか知らない場所へ
帰りたいと思った

何処かのラジオから
流れて来る音楽が
聞こえているが
音が水で薄まってしまって
曲までは解らなかった

ここがどこかも
解って居ないのに
どこへ行くと
言うのだろうか

様々な色の看板が頭上に
犇めき合っているので
読んで見ようと見上げたのだが
水滴に
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