「 人魚の涙。 」/PULL.
 

抱きしめてあげると、
スノメさんはいい子になった。
いい子のスノメさんはまあるくなって、
もっとまあるくなって、
しくしくと、
泣いた。
しょうがないので、
薄い頭を撫でてあげると、
スノメさんはあたしのおっぱいに、
ちゅうと、
吸い付いて、
ちゅうちゅうと吸いはじめた。
スノメさんはあたしのからだの中で、
おっばいが、
いちばん大好きだった。
きつく吸い付かれた痛みが、
頭の中でじんじんと、
鳴って、
いた。

そのまま朝まで一緒にいて、
明け方に、
スノメさんと別れた。
スノメさんはまだ泣いていたけれど、
もう、
心は痛まなかった。


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