水玉世界/朝原 凪人
コンクリートは今にも融けだしそう
足下はすっかりぬかるんでしまって
降り続く雨のせい
ズボンを汚らしく染め上げた
地面を弾いた雨粒が
おぼつかない足取りで俯いた僕の
ビチャリ ビチャリ
ズボンを汚していたのは僕自身
嫌な音は歩く度
バシャリ バシャリ
走り抜けた誰かの背中
怖くなって立ち止まった僕の横
靴裏から弾き出された世界の欠片
僕の知らない誰かの世界
まるく雫に収まって
紫の空
緑の海に
白い林檎
足下広がる水溜まり
目一杯蹴り上げた
飛沫を上げて散らばって
青い猫
黒い月に
赤い蜜柑
穹に生まれた世界の欠片
僕の知らない僕の世界
まるい雫の数々が
汚れたズボンは幾何学模様
気付いた瞬間 色を持つ
虹色グラデーション
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