夏の誘拐/
なかがわひろか
夏は結局いつも
気づけば私を置き去りにしてしまうから
今年はちゃんと捕まえて
かごの中に閉じ込めてやろう
だらだら溶けるアイスキャンディーは
外れの文字をさらけ出すだけだけど
それはきっと夏が訪れた証
それを餌に私は待つ
もうすぐ夏がやってくる
私は網を片手にじっと息をすます
夏は音も立てずにやってくる
私はそっと耳を澄ます
もうすぐ夏を
捕まえる
(「夏の誘拐」)
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