夏の誘拐/なかがわひろか
 
夏は結局いつも
気づけば私を置き去りにしてしまうから
今年はちゃんと捕まえて
かごの中に閉じ込めてやろう

だらだら溶けるアイスキャンディーは
外れの文字をさらけ出すだけだけど
それはきっと夏が訪れた証
それを餌に私は待つ

もうすぐ夏がやってくる
私は網を片手にじっと息をすます
夏は音も立てずにやってくる
私はそっと耳を澄ます

もうすぐ夏を
捕まえる

(「夏の誘拐」)
戻る   Point(2)