*浮き島/チグトセ
 
短編小説。長いです。



僕は睨みつけた。この狭い視界の中から、猜疑心満載の眼差しを、ちらつかせながら、今見えている僕の居るこの世界に、差し向けた。

掴もうと手を伸ばしたが、ここには多くの膜や壁があっていちいち距離感を把握しにくい。そして、人間の本能は哀しいことに快適さを望むから、僕はできるならその不可解で大事な本能に逆らわないようにしながら、目の前にある「もの」をとりあえずひととおり睨む。

「そう、それは現実だよ」彼が喋った。僕はそこに手が届いたことになる。ところが、場面をよく思い出せない。僕は、必ずどこかにはいなければいけないのに、その重要性に気付いていなくて、
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