窓辺の心臓 /
服部 剛
窓辺には
ガラスケースにしまわれた
誰かの心臓が置かれている
真夜中の無人の部屋に現れる
今は亡きピアニストの面影
奏でられる旋律に
永い眠りから覚めた心臓は
脈を打つ
部屋の窓を開くと
深い闇の彼方から
潮騒が聞こえる
テーブルの上には
ゆるやかな時を刻む
めとろのーむ
柱の上には
時間の止まった
古時計
( 振り子は揺れて、鐘は鳴る )
窓辺に置かれた
心臓の鼓動は高鳴り
闇の潮騒に赤々と昇る
あの太陽を
待ち望む
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