エロティックな身体/千月 話子
未明の白百合は 硬く花びらを閉じた蕾
群生した土の上で 静寂と夜を眠る
薄明かりの空を 見上げれば
霧雨が 月をかすかに汚し
花の下へと 降り積もる
水を含んだ 白百合は
耐え難い苦痛から逃れようと
幼い香りで守られた聖域を越えて
互いの身を 擦り合わせながら
ドクドクと水を吐く
開放された喜びに 開花する
成熟した きつい芳香は
集団では 好まれず
夜明けには引き離される 定め
同じ匂い 同じ形 悲しい身体
君を 忘れないよ・・・
明け方の薔薇は 丸く花びらを閉じた蕾
整えられた庭園の上で しなやかに戯れる
ぼんやりと光り射す
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