初夏の背中/銀猫
 

背中が守られている
抱擁でなく
囁きでなく
いつも見えない後ろが
守られて温かい
そんな気がしている

口元が護られている
くちづけでなく
言い付けでなく
冷たい言葉が洩れないように
ため息が誰かを泣かせぬように
不思議な封印がしてある


ここに
ひとりでいる
ひとりでいる
けれど孤独という匂いを
わたしは忘れている

流れている
流れている
身体を循るすべてのものが
きみの方向を指している

風が首すじの髪を
きみに向けてちいさく煽る
五月の微かな初夏に



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