月下夜想/佐野権太
 
月光をすくい、すくって
髪を洗い
ほっそり
とうめいな櫛を曳く

鎮まってゆく肌、肌に
しみこんでゆく
流麗な調べ


呑まれても
ひとひら
抱きしめても
ひとひら
ふりつもり
たゆたう夜の花筏(はないかだ)


ささやく窓辺に
ぽぅ、と白がともり
まわりから
すいこまれてゆく

広い夜空を
おもはゆく
またたく星、星の
静けさ

こぼれるほどの、しん





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