宇宙 ☆/atsuchan69
鋼鉄を 遙にしのぐ
美しく、強靭な 折り紙細工の船にのり
飴色のラタンの椅子に腰掛けて
今宵もまた 私の人差し指は、
暗く果てしない 緻密な航路を正確になぞる
航行中もドアの向こう側には
危なげなく私の故郷があり、
いつでも自由に出入りできる仕組みになっていた
なので殆どの時間は書斎で部厚い本を読んで過ごしている
誰もがそうであるように、退屈な飛行には興味もなく
やはり安易な空間歪曲システムを利用したい
今どき恒星間旅行など流行らないし
すでに距離と時間を征服してしまった人類にとって
スリリングな離陸と着陸のシーンを味わうこと意外に
宇宙飛行の醍醐味というものは
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