私料理/なかがわひろか
 
愛しいあなたは
きっとお腹を空かして帰ってくるでしょうから
私は私を切ったり焼いたり煮たりして
おいしい料理を作りました

帰ってきたあなたは
皿の上に載った私を平らげて
そのまま眠ってしまいました

あなたの中は
とても温かくて
やっと一つになれたという実感でいっぱいでした

ただ幸せな時間は
いつまでも続くことはありません
チクチクとあなたの胃酸が
私を突き刺して
いつしか私を溶かしてしまいます

私のいくつかは
あなたの血や肉となることができましたが
ほとんどが異物とされ
何日かしてあなたから排泄されました

[次のページ]
戻る   Point(5)