私料理/なかがわひろか
愛しいあなたは
きっとお腹を空かして帰ってくるでしょうから
私は私を切ったり焼いたり煮たりして
おいしい料理を作りました
帰ってきたあなたは
皿の上に載った私を平らげて
そのまま眠ってしまいました
あなたの中は
とても温かくて
やっと一つになれたという実感でいっぱいでした
ただ幸せな時間は
いつまでも続くことはありません
チクチクとあなたの胃酸が
私を突き刺して
いつしか私を溶かしてしまいます
私のいくつかは
あなたの血や肉となることができましたが
ほとんどが異物とされ
何日かしてあなたから排泄されました
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