初恋/美砂
 
僕の両親は なんとか繕ってはいたが
あのころすでに
「破滅」していたのだと思う
僕はそんな言葉さえしらないまま
「破滅」のまんなかで 肩身がせまかったのか、精神的に不安だったためか
実のところ、そんなこと理由にはならないのかしらないけれど
君に恋をしていた

都会からきた君は
細くて白くてしなやかで、かといって貧弱なのではなくきわめて健康的で
男の子としてはあまりにも美しすぎる顔つき
すぐに幼稚園の人気者になり
頬を丸く赤く染めた、小太りぎみの、みるからに田舎者の僕は
僕の母親が君の母親と仲良くなるずっと前に
君の虜になった

覚えているかな 
新一年生のための
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