かすがい/チェセロロ
 
君の言葉を聞き入れることは
容易くないことぐらい知っていた
それでも追いかけたのは
意味も無い、生きるという焦燥
きっと必要とされなくなったら
歩みをやめてしまうのね
哀しいほど耳元で響く
あの声は幻想

君の肩越しに見えた柱には
影で出来た扉があった
あれに手を伸ばせば、君は落ちる?
墜落できたとしても
君は這い上がるそうだ

約束ぐらい守ってよね

そういう私は多分、君を突き放して
柱の影に落とさないようにするんだ

祈りを捧げるために組んだ両手と
同じくらい温かいかと思った君の手は
予想以上に冷たくて、ごつごつしていた

結局、私はこの記憶さえも消してしまうのかもしれない

いつか全てを忘れないために
あの時の白い砂や、深い海や、鮮やかな緑を
まだここに覚えていられるように
君を想う、ふりをしている

君を、繋ぎとめる道具として、扱っているのかもしれない

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