掌編小説『しゃしんの女』 〜下〜/朝原 凪人
 
った指の人差し指だけを立てて、女はそれを自分のこめかみに当てた。そしてドリルで抉るようにそれを回す。
「ここにある神経を一本、プッツリと切る感じです」
 そう語った顔は、既に涙が渇き無表情のそれだった。
「プッツリと、ね」
「簡単なことですよ。貴方をやってご覧になればわかります」
「いえ、私は」
 苦笑で返すと女は、
「そう。それは残念」
 まったく残念ではなさそうに言うと。別れの言葉もないまま重い扉を無表情のまま閉ざした。
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