九百九十九年/岡部淳太郎
 
もうすぐ
九百九十九年になります
その頃には
ひまわりも咲いているでしょう
絶望から生き残った
藁のような人びとが
ゆらゆらとゆれているでしょう
咲いてしまうことに
罪はなくて
咲いてしまったことへの
罰だけがあるのです
ただそうなってしまったという
私たちの
なんという愚かさでしょう
そうして私たちは歩き
止まり
時々駈けぬけながら
もうすぐ
九百九十九年になります
一年でも多いと長すぎて
一年でも少ないと短すぎて
私たちには
完璧も貧弱も
似合わないのです
遠い海の底で戦争があり
高い山の頂で首吊りがありました
そんな歳月のあいだ
私たちは
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